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特定調停
特定調停

特定調停とは・・・

支払不能に陥るおそれのある債務者等が負っている金銭債務についての利害調整を促進して、債務者等の経済的再生に資するよう、民事調停法の特例を定めたもので、平成12年2月17日から施行された特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律及び特定調停手続規則に基づく調停手続のことをいいます。

この手続は、これまで債務弁済協定調停事件において実務上の運用されていた制度をあらためて法制度化したものです。

この手続を利用することができるのは、金銭債務の調整のみで金銭債務以外の債務についてこの手続を利用することはできません。

特に、債権者が少数で、債務額が少額の場合には利用するメリットがあります。

利息制限法に基づく残債務の引き直し計算により残債務の圧縮が可能となり、また今後の返済分については利息がカットされると2つの大きな特徴があります。前者については、取引期間が長ければ長いほど、債務の圧縮率も高く、場合によっては債務不存在になる場合もあります。また、貸金業規制法第43条のみなし弁済が成立する場合には、利息制限法に基づく引き直しができない場合もあり得ますが、実際は運用で否定されています。

調停を利用するケース

(1)債務額が少なく支払不能といえない場合

破産制度における破産の要件は支払不能等です。支払不能であるか否かの認定は個別の事情により左右されるので、一般的な基準をだすことが出来ませんが、例えば月収2 5万円で返済可能額が5万円の人が500万円を越える高利の負債を負っていれば、3年間での返済を考えると月々の返済額は約15万円程度となり、支払不能といえるでしょう。

では、同じ人が150万円の高利の負債を負っているとしたら、月々の返済額は5万円足らずで特別に必要とされる支出がなければ支払不能の認定は難しいと考えられます。

このようなとき有効に活用できるのが、この特定調停制度です。

なぜ有効に活用できるかを考えるのには、この制度がないことを考えればわかりやすくなります。
上記の例でいっても月々の返済額は7万円乃至8万円に及びます。月収25万円の人がこれだけの金額を返済するのはたいへんなことです。しかもまた30%近い高利の利息がつくのですから、返済してもなかなか元金は減りません。さらにまたこの程度の借金であればサラ金はまだまだお金を貸してきます。そこで借金返済のために他のサラ金で借金してという悪循環に陥る危険は極めて高いものとなります。

このようなとき調停制度は、利息制限法に基づく金利に引き直し、現在の残高を確定し、その後の支払も低利な金利・あるいは金利をカットして分割払いというかたちで調停委員が交渉してくれますので、自分で無理のない生活設計を立てることも可能になります。

(2)保証人がいる場合

ある人が多重債務に陥り、客観的に見て支払不能状態である場合であっても、その大部分の債務に保証人がついている場合は、破産の効力は保証人に影響がないので、破産者にかわり保証人が債務の弁済をしなくてはなりません。

保証人もまた保証債務の履行により支払不能となるのでしたら保証人も含めて破産の申立をすることになりますが、保証人に支払い能力がある場合には、わざわざ破産をしても、借金総額は同じということになり、破産制度を利用する意味が薄れてきます。

 そのようなとき特定調停制度を利用します。
特定調停制度は利息制限法に引き直し元本を確定しますので、長い間支払っている業者の債務は、当然に減額されますし、また書き換え(借り換え)が中途でなされていても、継続した契約とみなされますので、この場合も同様です。
これは、主債務者が特定調停の申立を利用する場合でも同様であり、保証人が主債務者と同様に申立人として関与しなければ、利息制限法による債務の引き直し及び将来利息のカットという特定調停の効果が及ばず、約定通りの返済をする必要がありますので、以上のデメリットを説明の上、保証人の関与も求める必要があります。

(3)その他の場合

@債務者の収入が比較的多く、且つ安定している場合。

公務員や大手企業に勤務している債務者の場合は、退職金の額(その時点で退職した 場合の退職金予定額)が、多額となり、破産制度を選択すると退職金予定額の1/4(実務上多くは1/8)を破産財団に提供する必要があるため調停制度を利用した方が有利な場合が多いです。

Aまとまった返済金が用意できる場合。

親族等の援助で、まとまった返済金が用意できる場合は特定調停を利用しやすいです。この場合の弁済額は少なくとも契約当初から利息制限法で引き直した金額を返済金としてください。

B自営業者が営業を継続していく場合。

債務発生の原因の大部分が、自営している営業にあるとしたならば、破産免責手続きを選択すれば、資格喪失の問題或いは融資による運転資金の確保ができなくなるという意味でその営業は原則的には続けることはできない場合が多いです。このような時は、特定調停を利用し、債務額を圧縮して営業を継続するしかありません。
この場合も、債務の額と営業収益のバランスをよく考えて判断する必要があり、どう考えても支払不能であれば、破産を選択すべきです。

C債務者が不動産等の財産を所有している場合。

債務者が不動産等の財産を所有している場合には、破産の場合には破産財団に提供しなくてはなりません(但し、オーバーローンの場合を除く)。
また債務の額が所有する財産より少ない場合には、そもそも支払不能の要件から外れるのですから、破産の選択はできないことになります。しかしこのまま放置しておけば破綻の恐れがあるのですから、このような場合には特定調停を利用し、経済環境の改善に努めるようにしましょう。

D免責不許可事由が著しく大きい場合。

破産を選択しても、免責不許可事由の存在が大きく、免責を受けられる見込みがほとんどない場合は、調停を選択するしかありません。しかし、免責不許可事由が存在する場合でも、破産を選択する方が債務者の更生に役立っこともありますので、慎重で幅広い判断が必要です。

調停を進めるにあたっての注意事項

特定調停、あるいは今までの債務弁済協定調停を利用すべきか清算型の手続(破産)を利用すべきかの判断は慎重に行なわなければなりません。

既にクレジット・サラ金で多重債務を負っているわけですから、基本的には生活費が不足していることを前提に考えていただかないといけないと思います。
調停において最も危険であるのは、調停を成立させたが結局は支払が不能にいたる場合です。必要生活費の計算を甘くすれば、計算上債務の返済が可能になりますが、このようにして調停を成立させたとしても結局は支払不能に陥ります。

調停も一旦成立すると、調停調書は強制執行について確定判決と同様の効力が与えられますので(民事調停法第17条に基づく裁判官の決定を除く)、調停の内容どおりの弁済が行われない場合には、債権者によって即座に強制執行が可能になりますので、調停案どおりの返済が可能であるかを充分に検討することが必要です。

特定債務者

特定調停手続を利用することができる特定債務者とは、金銭債務を負っている者で、
次の要件を満たす者を言います。

(1)支払不能に陥るおそれのある者
   個人・法人、事業者・非事業者を問いません。
(2)事業継続に支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することが困難な者
   個人・法人は問いませんが、事業者である必要があります。
(3)債務超過に陥るおそれのある法人
   法人であれば、事業者・非事業者は問いません。
   既に債務超過に陥っている場合も利用できます。

申立手続

(1)申立方法

特定債務者が、民事調停申立と同時に特定調停手続を求める旨の申述をする必要があります。なお、申立権は特定債務者のみにあり、債権者が特定調停の申立をすることはできません。

申立書は債権者ごとに作成します。
また、申立書の申立ての趣旨は、「債務額の確定と支払方法の協定を求める。」という記載で足りますが、必ず「特定調停手続により調停を行うことを求めます」との文言を入れる必要があります。
また、申立書において紛争の要点を明らかにする必要があります。

(2)管轄

原則として、相手方住所、居所、営業所・事務所の所在地管轄の簡易裁判所となります。例えば、申立てが複数ある場合は、最も営業所等の管轄が多い裁判所が管轄裁判所となります。                                            (例)6件の申立てで、債権者の営業所が3件が大阪簡裁、2件が吹田簡裁、1件が東大阪簡裁の場合 ⇒ 原則大阪簡裁が管轄裁判所 
但し、特定調停においては、当事者の合意、または例外的に上申書の提出による管轄も可能です。

(3)受付

申立書の提出は、各簡易裁判所の民事受付に持参します。郵送でも可能です。
受付時には、申立書の記載遺漏及び必要添付書類の確認等の形式的審査を行いますが、一部の簡易裁判所を除いて、現実の支払い可能性を含めた実質的審査を行います。
特に、大阪簡易裁判所の場合は、申立件数が多く、午後に申立てをした場合には、即日で事件番号が交付されない可能性もありますので、できる限り申立ては、開庁直後もしくは午前中早々に行うのが望ましいです。

また、収入の証明資料など、一部疎明資料の不足している場合でも、申立人の利益
(事件番号の早期通知)を考慮し、事後的な追完で対応できるように働きかけるべきでしょう。

(4)貼用印紙・予納郵券 

申立書貼用印紙は、1件につき金300円です。 
申立書1件についての予納郵券は、各裁判所によって異なりますので、事前に管轄裁判所にご確認下さい。 

(5)申立書の添付資料

特定調停の申立にあたっては、申立と同時または遅滞なく次の書類の原本又は写しを裁判所に提出しなければなりません。なお、実務上は、破産申立ての際に提出を求められる程度の資料を提出するよう指導されるケースは少ないですが、個別のケースによって異なりますので、裁判所の指示に従ってください。

1.財産状況を示す明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料
 (1)申立人の資産、負債その他財産状況の資料
   〈資産〉不動産の登記簿謄本、評価証明書、車検証、査定書、生命保険証等
   〈負債〉 契約書・領収書
 (2)申立人が個人であれば、職業、収入その他生活状況の資料
    給与明細書(申立直近2〜3ケ月分が一般的)、源泉徴収票、所得証明書、
    家計収支票など
 (3)申立人が事業者であれば、事業内容、損益、資金繰り、その他事業状況の資料
    確定申告書、預金通帳(取引先からの売掛金の入金記載のあるもの)
    会計帳簿、貸借対照表等、資金繰り表など
2.関係権利者一覧表
  氏名又は名称、住所、有する債権または担保権の発生原因及び内容を記載する必用
  があります。
  特定調停手続においては申立時現在のすべての債権者を相手方とする必要はありま
  せんが(但し、調停委員からは、申立対象外の債権者についても申立をするよう指
  導される場合もあります)、特定債務者の全負債を明らかにするために関係権利者  
  の一覧表の添付が求められています(民事調停法第3条3項)
3.資格証明書
  但し、一部の裁判所においては、大手消費者金融業者を中心に既に商号・本店・代
  表取締役等の名簿があり、例外的に添付省略可能の場合があります。申立前に、管
  轄裁判所にご確認下さい。

当事務所では、特定調停申立のお手伝いをさせていただいております。

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